道路交通騒音予測計算モデル ASJ RTN-Model 2018 の中の走行速度に関するある仕組みを発見した。
ASJ RTN-Model 2018 の記述から基本の式を抜き出す。
ある予測点の騒音レベル(1個の音源区間について)
LA,i = LWA,i -8 -20Log(ri) +ΔLcor,i
i :音源区間の番号
LA,i :A特性騒音レベル [dB]
LWA,i:A特性音響パワーレベル [dB]
ri :音源から予測点までの直線距離 [m]
ΔLcor,i:各種の減衰による補正量 [dB]
(Log は常用対数を意味する。以下同じ。)
自動車走行騒音のA特性音響パワーレベル(1個の音源区間について)
LWA,i = a + bLogV +C
LWA,i:A特性音響パワーレベル [dB](ただし、密粒舗装道路とする)
V :走行速度 [km/h]
a :車種(小型車・大型車など)別の定数
b :速度依存性を表す定数
(ただし、定常走行区間ではb =30、非定常走行区間ではb =10)
C :各種要因による補正項 [dB]
単発騒音暴露レベル(1台について)
LAE = 10Log((1/T0)Σi(10^(LA,i/10)・Δti))
Δti = ΔLi/V
LAE :単発騒音暴露レベル [dB]
T0 :基準時間(=1s)
Δti :区間iの通過時間 [s]
ΔLi :区間iの長さ [s]
(記号^はべき乗を表す。Σiはiについての総和。以下同じ。)
騒音レベル(1車線について)
LA = LAE + 10Log(NT/T) [dB]
LA :A特性騒音レベル [dB]
NT :時間Tの間の交通量
T :予測対象時間 [s]
以上の式を書き直す。
LA,i = LWA,i -8 -20Log(ri) +ΔLcor,i
= a + bLogV +C -8 -20Log(ri) +ΔLcor,i
= bLogV +Ai
ただし、Vを含まない項をまとめて
Ai = a +C -8 -20Log(ri) +ΔLcor,i
と置いた。
LAEの式の中の10^(LA,i/10)・Δti を変形すると、
10^(LA,i/10)・Δti
= 10^((blogV +Ai)/10)・Δti
= 10^((b/10)LogV)・10^(Ai/10)・Δti
ここで、
Δti = ΔLi/V
であるから、
10^(LA,i/10)・Δti
= V^(b/10)・10^(Ai/10)・ΔLi/V
ところで、非定常走行では b=10 であるから、
10^(LA,i/10)・Δti
= V・10^(Ai/10)・ΔLi/V
= 10^(Ai/10)・ΔLi
すなわち、Vはキャンセルされる。LAEは
LAE = 10Log((1/T0)Σi(10^(LA,i/10)・Δti))
= 10Log((1/T0)Σi(10^(Ai/10)・ΔLi))
LAEに走行速度Vの影響はないことになり、したがって、騒音レベルに走行速度の影響はない。
市街地の一般道路のような非定常走行区間では、走行速度が変動しやすいので、騒音は走行速度に影響されないように、
巧妙にモデルが作られているということである。
(マニュアルにそのような説明は見当たらない。)
一方、定常走行の場合は、 b=30 であるので、
10^(LA,i/10)・Δti
= V^(b/10)・10^(Ai/10)・ΔLi/V
= V^2・10^(Ai/10)・ΔLi
LAE = 10Log((1/T0)Σi(10^(LA,i/10)・Δti))
= 10Log((1/T0)Σi(V^2・10^(Ai/10)・ΔLi))
= 10Log(1/T0) +20LogV+10LogΣi((10^(Ai/10)・ΔLi))
したがって、騒音レベルはVの増加にともなって増加する。
・車両の音響パワーレベルは明らかに走行速度とともに増加する式であるのに、走行速度を変更しても騒音レベルは変化しない結果が出て、
当初は非常に困惑した。モデルに従った自前の計算だけでなく、ASJのソフトを使用しても同じ結果で、謎が深まった。
(これは、市街地の道路であった。)
・一方、高速道路の計算では、走行速度とともに確かに騒音が増加することを確認したので、音響パワーレベルの式に理由があると思い至った。
・利用者が悩まないですむように、ASJはどこかに解説しておくべきと考える。
・上記は密粒舗装の場合であるが、排水性舗装では非定常走行区間を想定していない。